Vila ら[12]は、イヌの塩基配列に見られる変異が生じるために必要な時間として、13万5千年という数字を算出している。 この「遺伝子時計」が示す数字が正しいとすれば、考古学的な証拠から確認されるよりもはるかに長い時間である。 この時期の違い[16]については、初期のイヌの形態がオオカミとほとんど変わらず、 化石からは識別できなかったのだと考えることもできる[17]。
しかし、Wayne and Ostrander[18] や Savolainen ら[14]による報告では、「イヌのDNAの塩基配列に見られる変異が 1匹のオオカミのみに由来する場合はイヌの家畜化は約4万年前」「複数のオオカミがイヌの系統に関わっている場合は約1万5千年前」 という見解が提示されている。田名部(2007年)は、アフォンドバ遺跡(約2万年前、ムスティエ文化)で発見された犬の骨[19]に基づいて、 この時期にオオカミとイヌが分化したことを支持している[4]。